はじめに

過去ノート「『年収130万円の壁』を考える」にて「『新しい資本主義』は実態がつかみにくい」と書きました。
多様な価値観の中で、GDPの数値を眺めるだけでは新しいものは見えてこないので、このノートでは「新しい資本主義」と「デジタルトランスフォーメーション(DX)」がどのように絡み合い、未来を形作っていくのか、そのキッカケを少し考えてみたいと思います。

資本

「資本」という言葉を耳にすると、多くの人は金銭的な資源を思い浮かべるかもしれません。しかし、現代社会における「資本」の概念は、複雑で多様化してると言えます。

  1. 経済資本:財務的資源、企業の経済基盤
  2. 自己資本:企業独自に調達した資本で資本金や純資産など(金融資本)
  3. 他人資本:銀行や個人など企業の外部から調達した資金など(金融資本)
  4. 人的資本:従業員、従業員スキルなど人的リソース
  5. 知的資本:特許などの産業財産権、著作権、経験、発想、アイデア、閃き
  6. 社会資本:信頼関係、共同体、社会的繋がりによる価値
  7. 文化資本:教育、カルチャー、生活様式など
  8. 自然資本:清浄な空気、清浄な水、多様な生物やそれらによるサービス
  9. 技術資本:新しいテクノロジー、革新的方法論やそれらによるサービス
  10. 情報資本:データ、情報、通信技術など
  11. 政治資本:政治的影響力、決定権、政策形成権力など
  12. 創造資本:創造性や革新的アイデア
  13. 倫理資本:倫理観や道徳的価値観、企業の社会的責任

このように「資本」の種類を挙げ出すと枚挙に暇がありません。
これらはすべて、現代社会において異なる形で価値を生み出し、経済や社会に貢献しています。
個人的には「新しい」と名乗るからには、実際に新しい「◯◯資本」が出現するぐらいインパクトは持たせたいと思います。
いわば資本のイノベーションです。

AIとの共存

過去ノート「『年収130万円の壁』を考える」では、分配面から見たGDPを上げるために、以下の悪循環についても述べました。

●賃上げと130万円の壁の矛盾

賃上げ → 130万円の壁(早く130万円に到達) → 労働時間を減らして調整 → 労働力不足

展開として、外国人労働者の受け入れについて述べましたが、他にAIが仕事を奪う可能性も言われてますので、その点も考えてみます。
AIは24時間365日の過酷な労働でも疲れませんし文句も言いません。必要な賃金は電気代や場所代だけです。労働環境の改善や、ホワイトな働き方改革など考えなくても良く、むしろプレッシャーを与えるほど仕事の質が上がっていきます。

テクノロジーが仕事を奪った過去

「仕事を奪う」という事象は言い換えれば「代替品(代替材)」「競合品(競争材)」の出現であり、例としては以下のようなものが挙げられます。

新しい技術>消滅する産業>
蒸気機関馬車の御者(運転手)
CDレコード針
スマートデバイスCDプレーヤー
デジタルカメラ撮影フィルム

生成AI(Generative artificial intelligence)

AIは「人工知能」や「ニューロン」「脳科学」といったワード、また映画やアニメから、人を超えて仕事を奪うと連想してしまいますが、むしろ支援してくれるものであり続けると考えます。
といいますのも、生成AIだけを切り取ると受動的なツールで「補完材」であるからです。
そのため、補完的なサービスにとっては、代替材として置き換わっても、全体を見れば生産性が上がる程度だと考えます。

AI時代に大切な資本

補完材であるAIが普通に利用される時代であるからこそ「知的資本」を中心とした資本イノベーションが大切になると考えます。
経験や勘、決断、観察した事象などの「閃き」から、生成AIにどのようにまとめさせるか?
この「閃き」がなければ、補完は不可能で、利用料だけを支払う「守りのIT」にとどまってしまいます。
知的資本テクノロジーをリンクさせることがDXを加速させることであり、グローバル社会で一端を担う「新しい資本主義」を生み出す力になるように思います。

新しい資本主義

他国基準に寄せていくのではなく、ガラパゴス化を恐れない「知的資本(日本人の経験等)」をベースとした経済活動。


そして、この新しい資本主義を作り上げるには、基礎知識の教育感動体験などが益々重要になると考えます。

トレンドリンク合同会社のサポート

2016年ごろ、AIの「カンブリア爆発」などと言われた時期がありました。
生物が目を持つことで、多様な生物が爆発的に出現したカンブリア紀に準え、AIも目(カメラ)を持ち、画像を学習できるようになったことで、AIが爆発的に進化するという予測のことです。
2023年には生成AIの出現。
弊社では、生成AIだけにとらわれず、複数のAI技術や別の技術も融合しながら、お客様の夢を実現する架け橋となります。

「どうしたらいいのかわからない」「何から手をつければいいの?」「時代に置いて行かれないか?」という、ぼんやりした不安の段階から、お気軽にご相談ください。
必要に応じて、DXプロデュース支援、CIO/CDO/情シス部長支援、AIツール開発支援、ITサポートなど幅広いサービスをご提供いたします。

Appendix

政府広報オンライン

新しい資本主義の実現に向けて | 政府広報オンライン

「新しい資本主義」とは何か。官と民が協力して、成長と分配の好循環を実現する「新しい資本主義」について、イメージも交えてわかりやすく説明するとともに、各種取組に…

首相官邸「新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画」

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要約:「新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画」

新しい資本主義の概念を具現化し、日本の経済と社会の構造を改革するための包括的な計画を提示。
この計画は、市場の失敗を是正し、普遍的価値を擁護し、市場と国家の協力による課題解決と新たな市場・成長の促進を目指す。

主なポイント
  • 資本主義のバージョンアップ: グランドデザインと実行計画は、成長と分配の好循環、中間層拡大の促進。
  • 市場の失敗と普遍的価値:市場の失敗を見直し、経済的格差の是正、気候変動問題の対応、経済安全保障の強化を図ります。
  • 市場と国家の役割:「市場か国か」という二項対立でなく、市場と国家が協力して社会的課題の解決と持続可能な成長を目指す。
具体的施策
  • 人への投資と労働市場改革:職務給の導入、リスキリングによる能力向上支援、労働移動の円滑化を通じて、労働市場の柔軟性と公正性を高める。
  • GX・DX投資:グリーン変革(GX)とデジタル変革(DX)への投資を促進し、回復(レジリエンス)と成長力を確保する。
  • スタートアップ育成:スタートアップの創出と成長を支援するための環境整備と資金供給の強化。
  • 社会的課題の解決:インパクトスタートアップへの支援や、NPOや公益法人への支援を通じて、社会的課題の解決を経済成長のエンジンにする。